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2006 / 07 / 10 ( Mon ) 06:54:15
彼は自ら舞台を降りた。
長年、世界を魅了し続けた彼は、金色のトロフィーに目もくれずに静かにピッチを去った。

誰もが認めるスーパースタージネディーヌ・ジダンは、一度は代表引退を表明していた。
けれども、長年彼が組み立ててきたチームは彼なしでは欧州予選に苦しんだ。その姿を見て彼はもう一度青いユニフォームを着ることを選んだのだ。

いつからか、フランスはジダンありきになっていた。強国と呼ばれ、彼を中心に98年自国開催のW杯では優勝をもぎ取る。
02年は相も変わらずの絶対の大黒柱であるジダンが怪我に苦しみ、それを象徴するかのようにチームも1次リーグ敗退という結果に終わる。
そして04年欧州選手権を戦い終えた彼は、06年W杯の欧州予選を前にして30歳を超えていたジダンは代表引退を表明する。
けれども、ジダンやフランス黄金時代を支えたベテラン勢を欠いたフランスはどうにも歯車がかみ合わない。それは欧州予選に入っても改善されることはなかった。
予選敗退の危機にまで追い込まれたフランスは再びジダンの力を必要とした。

いつからか、ジダンは「スーパースター」になっていた。
彼ならば必ず何とかしてくれる。彼ならばきっとチームを救ってくれる。それを誰もが疑わないような存在になっていた。
そして彼はそれに答える。
ジダンに合わせて、黄金時代の選手も呼び戻したフランスはさながら98年の優勝チームのよう。
そして彼らの力で欧州を勝ち抜きW杯本戦行きを決める。
彼らのピークは過ぎていたにも関わらず。
それを国民も判っていた。「W杯ではフランスは勝てない」そんな空気がチームを取り巻いた。
国民は判ってるはずだった。彼らはピークを過ぎている、と。
けれどそれはつもりでしかなかったのだ。
必ず期待に応えてくれたジダンを心の底では信じていたのだ。
ジダンなら何とかしてくれる。
どこかでそれを盲目的に信じる部分があったのではないだろうか?
そしてその見えない期待に応えるようにジダンはやはりチームを決勝にまで導いたのだ。
国民にはいや世界中の人の目に98年と重なるフランスチームが見えただろう。
そしてそれを引っ張るジダンの姿もまるで最盛期の彼に重なって見えただろう。
誰もが信じたはずだ。チームの栄光を。そして彼の輝きを。

けれども彼は自ら舞台を降りた。
彼を信じる国民からしたら凡そ信じられないことをして。
彼を中心としてまとまってきたチームは彼を欠き、そして負けた。

この大会のシナリオは出来ているはずだった。
決勝トーナメントにはいるまでは誰も信じなかったであろうシナリオは、決勝トーナメントに入り快進撃を続けるうちに誰もが信じるようになった。
決勝はそれをなぞるだけのはずだった。試合終了後、中心で誇らしげにトロフィーを掲げているのは彼だったはずなのだ。

けれどそれを自ら放棄した。
彼はピッチを去ることを余儀なくされた時何を思っただろう。

本当は02年大会で引退を決意していたのではないだろうか。
06年には33歳になる彼はおそらくピークは過ぎているだろう。
納得いく成績が残せたならその選択肢も持っていたに違いない。
けれど結果は強国のプライドをずたずたに引き裂かれたチームの姿が残っただけだった。状況が彼がユニフォームを脱ぐことを許さない。
ジダン自身もチームの立て直しの必要を感じたはずだ。そして04年の欧州選手権では満足と言えないまでも成績を残し、チームは自信を取り戻すきっかけを掴んだと言えるかもしれない。
ここできっと役目を終えたと彼は思ったはずだ。
いや、実際は違うのか。
04年欧州選手権結果は到底満足できる結果ではなかったことは確かだ。しかし悪くなかったことも確かだ。
自信を取り戻す手応えを掴めたかどうかははっきりとは判らない。
けれど、ジダンは悟ったのだろう。自分の時代は終わった。後進に道を譲るべきだ、と。
だから引退を表明した。
けれど、もうチームも国民もジダンなくしてはどうしようもできない状況にまでなっていた。

彼がピッチを去る。
ある意味それはとてもドラマチックな光景だった。
それはとても静かな引退式だった。
とても静かな幕引きだった。
華やかな道を歩いてきたジダンの引退は信じられない形で終わりを迎える。華やかとは対象を為す形で。
これでもしフランスが優勝したら、きっと彼は伝説になっただろう。それはさながらマラドーナのような。
W杯制覇。大きな大きな歓喜だろう。けれどそれはその後のことを考えるときっと少しだけ辛い。
期待に応え続けると言うことがどれだけ苦しいか彼は身を以て知っていたはずだ。
もしかしたら自らこの幕引きを選び取ったのかもしれない。
勿論彼は心からチームの優勝を願い、自分も貢献したいと望んでいただろう。それは確かなことで疑いようもない。

彼は最後にジネディーヌ・ジダンとして舞台を降りた。
ここに一つの時代が終わる。
紛れもなく彼は誰もが憧れるスーパースターだった。
チームは優勝できずおそらく彼もMVPを逃すだろう。
けれども、間違いなく最後までジダンの大会だった。
この大会は彼のためにあった。
サッカーを志す者なら誰もが夢見るW杯決勝という舞台で、「暴力行為一発退場」。
それが「世界を魅了したスーパースター」ジネディーヌ・ジダンとしての引退の舞台だった。


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